こんにちは、だるまんです。
「私、論文博士です。」
えぇ?!論文博士って?
と思った方のために、今回は、博士号に限りますが、大学院を通わなくても学位が取れてしまう論文博士についてご紹介します。
相談内容
知人が大学教員に転職をしました。大学院を修士まで出て、博士は大学院を通わなかったと言っていたのですが、学歴には博士号取得となっています。これってどういうことなんですか?
だるまんの回答
論文博士とは?
大学院には、基本的に修士課程と博士課程があります。
現在のところ、修士課程については、
- 通学制の大学院
- 通信制の大学院
の二通りの取得方法がありますが、博士課程については、
- 通学制の大学院
- 通信制の大学院
- 大学院には通わない
という三通りの取得方法があります。
今日、ご紹介するのが、まさに、この三つ目の方法「大学院には通わない」で、博士号を取得することを「論文博士」といいます。
「論文博士」を簡単に説明すると、
大学院に通わずに、自分で論文を書いて、審査通過できた場合、博士号を取得することができる制度
となっています。
大学院と言えば、
- お金がかかる
- 時間もかかる
- 労力もかかる
- 場合によっては仕事を辞めざる得なくなる
ものですが、これらを抜きにして、純粋に論文だけ提出・審査通過をすれば、大学院卒業者と同じ学位を取得できるので、非常に、魅力的な制度だと思います。
ちなみに、この制度はどれくらい活用されているのでしょうか?
論文博士取得者数
今回は、東京大学と京都大学で、それぞれ公表されている、「論文博士取得者数データ」を参考にしてみたいと思います。
【2012年度】論文博士学位取得者数 | 【2021年度】論文博士学位取得者数 | |
東京大学大学院 | 151名(学位取得者17,819名中) | 80名(学位取得者18,762名中) |
京都大学大学院 | 111名(学位取得者891名中) | 64名(学位取得者800名中) |
まず、東大は全学位取得者のうち0.4~0.8%、京大は全学位取得者のうち8~12%と、論文博士取得者とは、かなり少ないことがわかります。
さらに、10年前の2012年と、最新データの2021年を比較すると、取得者数が年々減ってきているようです。
少なからずコロナの影響も否めませんが、論文博士という道を選択している人は、かなり少ないということを、おおまかではありますが、この数字から把握できると思います。
どうやって取得するの?
論文博士取得者が少ないとは言っても、制度としては実在するので、ご自分にその条件がふさわしいのであれば、ぜひ選択してみる価値は十二分にあると思います。
そこで、論文博士を取るための条件を調べてみました。
具体的には、
- 大学院の博士課程の単位を修得して退学した満期退学者
- 大学院の修士課程を修了して3年以上研究に取り組んできた人
ということでした。
論文博士は大学院在学者とは異なり、基本的には、自ら論文を作成していくのですが、多少の指導を頂くために、指導をお願いできる教授への依頼が必要となります。
とはいえ、あくまで大学院生、要は学生の立場ではないので、指導といっても一研究者としての助言がちょっとしたサポート程度であり、ほぼ自助努力で論文を書くのが基本です。
そのため、
論文博士を取るには、かなり時間がかかる
のが一般的です。
具体的にどれほど時間を要するのか、というのは、人によって異なるものですが、少なくとも5年、長ければ10年ほどかかっています。
それは、基本的に指導なしで論文を書くというのもそうですが、働きながら論文を書く方が大半なので、時間がかかってしまう、というのがその理由でもあると思います。
働きながら論文を書くわけですから、実際に論文博士を取得される方の特徴といえば、
現職場にて研究を行っている人が多い
と感じます。
例えば、国・民間の研究所や研究室の研究員、大学教員等が筆者の知るところですが、これに捉われる必要はないものです。
指導教授はどうやって探すの?
論文博士は自分で取り組むものとはいえ、指導教授が必要です。
指導教授は、職場の上司からの紹介もあれば、修士時代の恩師にお願いをする、恩師に紹介してもらう、自分の上司(教授の場合)にお願いする等、人によって選択方法は様々だと思いますが、
基本的には、学位審査申請をする大学院の教授で、縁故のある方へ依頼することが多い
です。
そのうえで、まずは教授探しをする以前に、ご自分が学位を取りたい、審査を受けたいと思う大学院に、「論文博士制度」があるのかどうかを調べてみるのが、まずのこととなります。
もし、このような縁故者がいない場合は、大学院進学をされたほうが学位取得は近道かもしれません。
まとめ
以上、「博士号に限って、大学院を通わなくても学位が取れてしまう方法」についてでした。
論文博士という道は、自分一人の戦い、とても地道な道ではありますが、10年計画で論文博士を取得して教授職になられている方も多くいます。
この制度も一つの選択肢なので、博士課程をと思っている方は、ぜひ検討されてみては如何でしょうか。